良くも悪くもシンプルでした-『劇場版まどマギ [新編]反逆の物語』感想1

少し今更感もあるけどまどマギ劇場版の感想。結局見たのは2回で、最後に見たのは3週間前だけど、BDとかで見返すときのために現在の感想をば。まずは構成について。

 

一言で言っちゃうと、とってもシンプル!いい意味でも悪い意味でも枝葉が少ない。それぞれのキャラクターの立ち位置が把握しづらいけど、全体の流れはいたって単純。

すごくしっくりきたので、ゲンロンカフェの村上×坂上×さわやか座談会の書き起こしを引用。

 

前はアルティメットまどかのことを「概念」って言ったんですよね。でも今回はっきりとまどかは「神」として登場していて、ほむらは「悪魔」。「概念」っていう抽象性の高いものから、ベタな「神vs悪魔」って構図の神話に直そうとしている感じはした。今回の映画は非常にわかりやすくて、全力でエンタメに徹している。前の作品には母性の問題とか、なにか文学的なものが走っていたと思うんだけど。

途中までは神ですよ、百点満点。映画「まどか☆マギカ」最速沸騰座談会レポ1(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(2/4)

 

そう!劇場版まどマギは論点が一つしかない。最後のほむらの選択にどう反応するかだ。肯定派も否定派もいて、そこでこの映画の評価は二分されるんだけど、要は万人がそこに注目せざるを得ない。劇中のすべてが結末へのギミックになっている感じ。

 

前半はどこでも言われているように「公式の二次創作」で、その後は犯人捜し。そして絶望したほむらが救われる……と思いきやのラスト。面白いくらいにグイグイ引っ張られるし、悪く言えば「ここではこんな風に思ってほしいんだろうな」というのが想定できる。それでもほむらの悪魔化には驚いたけど!

 

 

TV版も振り返ってみると結構シンプルなあらすじなんだけど、いろいろな視点や、どんな方向に振れるかわからない感覚があった。上でも出てる母の目線とか、中学生という未熟な時期の微妙な友情や擦れ違い、対立とか。だから放送中にはぶっ飛んだ解釈や結末予想が生まれたんだと思う。鑑の国のアリス説とか、「いや絶対ねーだろ」と思いながら、内心それ以上のどんでん返しを期待してた。当時勉強そっちのけでスレに張り付いた身としては、そんな検証と考察を重ねためちゃくちゃな予想を見るのが面白かったし、それに対して一番最初に思いつく「禁じ手」を使ったTV版ラストにはちょっとがっかりする部分もあった。まあ話数の都合とか考えればベストだし、むしろきれいに風呂敷を畳んでくれてうれしかったのだけど。

 

もちろんこの差はTVと劇場という媒体の違いも原因だろう。TV版も今回の劇場版も、それぞれの媒体、視聴者の状況が綿密に考慮されながら作られている。

TV版では「魔法少女」に対する今までの印象が重要なフックだったし、毎回気になるところで終わる計算しつくされた引きだった。だからこそ震災での放送時期延長、ラスト2話(関東では3話)一挙放送は制作サイドからすれば大誤算だったんだろう。

劇場版はTV版の大人気を受けて、ファンへのサービスとTVの続きが共存できるように計算されている。TV版放送後に独り歩きしている感もあるキャラたちを、ファンが望む形で映像化した前半と、TV版の続きとして新たな選択をするほむらを描く後半。

 

見返さずにイッキに見ないといけない映画だからこその配慮だとか、特に今回は「どこの世界なのかわからない」という視聴者の混乱もあるからなのかもしれないけど、TV版にはあった、「本筋のちょっと外側にある感情」が希薄だったかな、と感じた。だからか2回目に視た時には予想以上に予想外の発見がなかった。

ただ、そうした以外にシンプルなストーリーに奥行を与えているのが、イヌカレー作画と梶浦サウンドなのです。劇場版にも衒学的な作画がたくさんあって、そういうところを探すのが2回目の醍醐味でした。BGMと作画はまどマギという作品にかなりの厚みとインパクトを与えていると思う。

 

以上が全体の構成についての感想についての感想です。

 

次回は肝心の「論点」について